【脱ミニマップ】キャラクターの「視線」はナビゲーションとして成立するか?

はじめに

ゲームにおいて、ミニマップやマーカーは便利なガイドですが、プレイヤーの視線が「画面の端」に固定され、丹精込めて作った世界観が二の次になるという課題があります。
本記事では、UIを排し「キャラクターの視線」のみで目的地を示唆するナビゲーション手法を考案しました。unityroomでの公開と、クリア後のアンケート調査を通じて得られた、プレイヤーの没入感と目的地到達の精度に関する知見を共有します。

開発したゲームの概要とシステム

本研究のために開発したプロトタイプは、シンプルな3D探索ゲームです。プレイヤーは広大なフィールドを歩き回り、隠された「目的地」を見つけ出すことが目的です。

1. 視線によるナビゲーション

一般的なゲームにあるミニマップや目的地マーカー(UI)は一切存在しません。その代わりに、操作キャラクターの「視点(首の向き)」が常に次の目的地を追うように設計されています。キャラクターがどこを見ているか、その視線の先を推測することが唯一の攻略のヒントです。

2. ステージ構成

全3ステージで構成されています。キャラクターの視線が示す場所へ向かい、特定のオブジェクトに対してインタラクト(アクション)を行うことで、次のステージへの道が開かれます。

3. 極限まで排除したUI

プレイヤーの没入感を削がないよう、画面上に表示されるUIは最低限の操作方法のみに限定しました。視覚情報のノイズを減らすことで、キャラクターの挙動そのものに注目が集まる設計にしています。

4. unityroomのURL

部屋から脱出するゲーム | フリーゲーム投稿サイト unityroom

アンケート調査結果

unityroomでの公開後、クリアしたプレイヤー(7名)を対象に実施したアンケート結果を報告します。

Q:プレイ中に「キャラクターの視線」がガイドであることに気づきましたか?

結果は以下の通りとなりました。

分析と考察

「すぐに気づいた」のは1名にとどまり、「途中で気づいた」を含めても半数程度という結果になりました。一方で、4割以上のプレイヤーは仕様に気づかないままクリア、あるいは探索を行っていたことが分かります。

この結果から、以下のUX上の課題と可能性が浮き彫りになりました。

  1. 「気づき」の誘発: 視線のみではガイドとして認識されるまでに時間がかかる、あるいは気づかれないリスクがある。
  2. 無意識下の誘導: 「気づかなかった」層がどのように目的地に到達したのか、視線による誘導が無意識に効いていたのか、あるいは偶然の探索によるものかの切り分けが今後の焦点となる。
  3. チュートリアルの設計: UIを排除しつつ仕様を伝えるための、非言語的な導入(例:最初に強制的に視線の先を注目させる演出など)の必要性。

Q:キャラクターの視線を頼りに、目標物へ迷わず到達できましたか?

(5段階評価:1.全くできなかった 〜 5.非常にスムーズにできた)

分析と考察

今回の調査で最も特徴的だったのは、評価が「5」と「1」に完全に分かれた点です。中間層がほとんどおらず、「仕様に気づいて活用できた人」と「最後まで意図が伝わらなかった人」の差が極端に現れました。

  • 成功の要因(評価5): 仕様を理解できたプレイヤーにとっては、ミニマップなしでも直感的に目的地を特定できる強力なガイドとして機能した。
  • 課題の露呈(評価1): 4割以上のプレイヤーが「全くできなかった」と回答しており、視線という非言語的なサインだけでは、ガイドとしての手がかりが不足していた可能性が高い。

Q:画面からミニマップやアイコンなどのUIを排除したことは、ゲームへの没入感にどう影響しましたか?

(5段階評価:1.没入感が削がれた 〜 5.非常に没入感が高まった)

分析と考察

特筆すべきは、「没入感が削がれた(評価1・2)」と回答したプレイヤーが一人もいなかった点です。

  • ポジティブな影響: 半数以上(57.2%)が没入感の高まりを実感しており、ミニマップ等の情報を画面から消すアプローチ自体は、世界観への没入を助ける有効な手段であることが示されました。
  • 「どちらともいえない」の背景: 4割強のプレイヤーは、前述の「ナビゲーションへの迷い」によるストレスが、没入感の向上を相殺してしまった可能性が考えられます。

Q:「キャラクターの視線でガイドする」という手法は、今後のゲーム体験として優れたものになりうると思いますか?

(5段階評価:1.思わない 〜 5.非常に強く思う)

分析と考察

将来性については、半数以上が「どちらともいえない」という慎重な回答になりました。

  • 可能性の示唆: 約3割のプレイヤーは、ミニマップに依存しない新しい体験に、可能性を感じているようです。
  • 「どちらともいえない」の理由: 「没入感は高まったが、迷うストレスも大きい」という今回の体験が、手放しでの高評価を妨げた可能性があります。

お寄せいただいた感想やアイデア

  • ちょっと視線がわかりやすすぎると思う
  • 最初から顔の向きに違和感があったので、部屋ごとに特殊アイテムを配置してアイテム取得すると見える、視線が向くなどの変化が起こるような段階を踏まえた誘導が自然な感じになるかと思います
  • 色や枠線ではなく視線でガイドを示すという手法はとても面白いと思いました! ただ視線がずーっとそちらを向きっぱなしなのはあからさま過ぎるかな…?と感じたので、一定距離以内に入ると視線がそちらを向くようにするとさらに自然に誘導できる…のかなぁとも思いました。 あとはすんごい個人的意見にはなるのですが、探索メインのゲームを三人称視点のカメラでプレイするなら肩越し視点だとよりゲームへの没入度が上がる気がします。この辺は既存タイトルになりますが初代Dead Spaceが視野角等も併せてカメラの使い方が上手いなぁと思った作品なのでご参考になれば…。 今回はゲームを公開してくださりありがとうございます!研究応援してます!

なるほど、たしかにある条件を満たしたうえで「キャラクターが対象の方向に視線を向ける」というのは自然な体験に近いものになりそうです。それをUIなしでやろうとするなら、

  1. まずは自由に移動する
  2. ある位置まで行くと、キャラクターが何かに気付く素振りをする(セリフでもいい)
  3. 最終的な目標物に視線を送り続ける

というような仕組みにすれば、プレイヤーに対しても「あ、これはそういう段階を踏まえて目的地を探すゲームなんだな」と気づかせられますよね。キャラクターの動きにビフォーアフターを付けるのはかなりアリな気がします。

  • 今回の仕様では視点をユーザーが自由に操作できることから、キャラクターではなくカメラフォーカス先がつねにユーザーの焦点となるため意図した誘導が有効になりえないと感じました。カメラは固定してユーザー操作をさせないつくりのほうがキャラクターのモーションの違いに気付く余地があるかと思います。 また、引きの構図だと物理的にキャラクターの細かいモーションに気付きにくいと思いました。 たしかサイレントヒル2などで近くのアイテムの方向に顔を向けるといった似た仕様があったはず…

ほほー、カメラ固定のほうが気づきやすいのかな。たしかにカメラを自分でぐるぐる回しながら見てると、キャラクターの視線がどこにあるのかを発見しにくい可能性がありますよね。前述したコメントにもありましたが、キャラクターの視線が攻略に大事なら、それを強調してあげるのもUX向上には重要ですよね。

  • 一度視線の仕組みに気付いた後は、首がまっすぐになる方向に歩き続けるとギミックにたどり着くという解法で突破しました。クリック点(オブジェクトの位置)が分かりにくく、自分で見つけた感が薄いように感じました。

たしかに、視線以外に何もヒントがないので、当たり判定がどこなのかもわかりにくいという問題がありました。当たり判定に触れたら何かしらのリアクションを表示する、くらいの優しさはあってもいいのかもしれないです。

また、

首がまっすぐになる方向に歩き続けるとギミックにたどり着く

というのはもちろん正解の攻略方法なのですが、やはりそれだけだと発見時のひらめきはありますが、プレイが単調になりますよね。やはり段階的な攻略の手順を踏んだほうが体験として良くなりそうだな、という気付きを得ました。

まとめ

今回の「キャラクターの視線によるナビゲーション」という試みを通して、ゲームにおける「情報の伝え方」と「没入感」のトレードオフが浮き彫りになりました。

実験の結果、ミニマップを消すことでプレイヤーを画面中央の世界へ引き込むことには成功しましたが、同時に「情報の不確実性」によるストレスを生むリスクも確認できました。特に、アンケート結果が「スムーズにできた人」と「全くできなかった人」の極端な二極化に分かれた点は、UX設計における大きな収穫です。

プレイヤーの皆様からいただいた「カメラワークの工夫」や「段階的な誘導」といったアイデアは、まさにこのストレスを解消し、「不自然なUIはないのに、なぜか迷わない」という理想的な体験を作るための鍵になると確信しています。

「視線」は単なる記号ではなく、キャラクターの意思そのものです。今後は、視覚情報だけでなく、環境音やライティング、そしてキャラクターの予備動作などを組み合わせ、より直感的で、より血の通ったガイド手法を模索していきたいと考えています。

最後に、プロトタイプをプレイし、貴重なフィードバックをくださった皆様に心より感謝申し上げます。今回の知見を、次回の開発にしっかりと活かしていきます。

まだまだご意見募集しております。ぜひプレイして、アンケート回答してみてください。

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